この間、2週間ほどアメリカから日本に帰国した。3年ぶりに見た日本。
インターネットで毎日、日本のニュースを見ているし、ちょこちょこユーチューブなどで日本のテレビ番組などを見ていたので、日本で何が起こっているかは知っていたが、やはり久々の日本は新鮮だった。
アメリカで3年も暮らしていると、徐々に日本の感覚とずれてくるところがあるので、今回は久しぶりの日本で特に強く感じたことを綴ってみる。
1,テクニック論であふれている。
日本で強烈に感じたのは、取り敢えず結果を求めてテクニックでなんとかしよう、という考え方に溢れていることだった。
日経新聞を1ページ開くと
「一流になるには●●をしろ。」
「英語をマスターするには●●だけやればいい」
といった題名の本が並び、 こんなテクニックを使えば、あなたの人生は好転する、といったメッセージを語りかけてくる。
とにかく新聞広告でも、テレビCMでも、電車内の広告でも
「これを食べれば痩せる。」
「聞き流すだけで英語がわかるようになる。」
「これだけで本が早く読めるようになる。」
「こうすれば頭がよくなる。」
といった、あたかもお手軽に結果だけ得られるかのようなメッセージに溢れている。
本屋に入ればタイトルだけで釣ろうとした、ダブルスペースで1ページ300文字くらいしかないのではないか?というスカスカなビジネス書が平積みになっている。
正直、
「こんなものに毎日触れていたら、そりゃ日本人の頭は悪くなるわ。」
と思った。
2,学歴ばかり気にしている。
日本で楽しみにしていたラーメン屋でラーメンを食べていると、大学生らしきグループの会話が聞こえてきた。そのうちの一人が
「最近、学歴がすべてじゃないんだな、ってことがわかってきた。それでも自分よりも下の人を馬鹿にしちゃう自分がいるんだけどさ。」
と言っているのを聞いて僕は結構な衝撃を感じた。
「いや、学歴がすべてどころか、何を勉強するかが大切だろ?」
と一瞬思ったが、思い返してみると、アメリカには予備校などない(たぶん)し、一部のエリートを除くと、できるだけ偏差値の高い大学を目指そうという考えも希薄なので、日本人の感覚を忘れていたのかもしれない。。
確かに日本の街を歩くと、どこに行っても塾や予備校で溢れかえっているのに気づいた。
ある日本国内の調査で「あなたの人生の目的は?」と聞かれた人たちの約20人に一人が「良い大学に入ること」と答えたのに、妙に納得がいった。
3,すでに改善の余地がない。
日本では多くの店やサービスなどがすでに完成されていて、改善の余地がないように感じられた。
ジャスコなどの量販店を歩いたが、とにかく清潔で、どこにいってもしっかりと対応してもらえる。しかも金額が安い物でも壊れない。店員さんたちは非常に気がきく。
もちろん、そうでない店もあるが、アメリカのサービスに比べるとずっと洗練されている。
特に首都圏ではすべてが出来上がってしまっていて、そのレベルを維持しようとするだけでみんなが疲弊してしまうレベルだ。
ここまで完成されているからこそ、逆に抜本的に新しい事をするコストが大きいようにも感じた。ダイナミズムはないが、こじんまりと完成した空間だった。
4,息苦しいメッセージで溢れている。
僕自身は長く営業の仕事をしていたので、広告を見たり読んだりするのは好きなのだが、あまりの広告の多さに少し圧倒された。
それらの広告は、
「こうしないと一流ではない。」
「こうしないと魅力的な人間ではない。」
「コミュニケーションができない奴はだめなやつだ。」
といったメッセージを放っていた。裏を返すと、
「あなたはこれができないからダメだ。」
「だからあなたは魅力がない。」
と言っていて、人に対して自信をなくさせるようなものだった。まあ、広告なのでそれは仕方がないことだが、実際は広告だけでなく日本人の意識自体がそうだ。
そんな否定的なメッセージの中に生きていたら、みんなが自信をなくしていくのも理解できた。
対してアメリカ人はほとんどの人が実際以上に自信マンマンだ。
「コンニチワ!」
「アリガトウ!」
の二言しか言えないアメリカ人が平気で、
“I can speak Japanese.” (日本語がしゃべれます!)
とか言っていることも多い。ほとんどのアメリカ人はとても褒め上手(?)で、ちょっとでも良い事があればどんどん褒めてくれるので、アメリカ人はみんな自信を持っている。
これは日本人が学ぶべきところだと思う。
まとめと考察
全体として言えるのが、3年ぶりに日本に帰った2週間で、
「学歴が高くて、イケメン(美女)で、英語ができて、お金を稼げる人になろう。そのためにはこうすればいいよ。それができない人はダメな人だよ。」
というメッセージを強く感じた。そして、それからちょっとでも外れる事を非常に怖がり、主にテクニック論でそれを乗り越えようとする風潮があった。
ちなみに、これは お隣の韓国でも近い状態だ。受験戦争は日本以上に激しく、女性は美しくなるためにほとんどみんな整形をしている。
その点、アメリカはかなり 様子が違う。
テクニック論はあるにはあるが、日本のように「サルでもわかる、●●」のような本はなく、何かを勉強しようと思ったら、1000ページ近くある分厚いテキストを買って学ぶのが一般的だ。
学歴の捉え方も日本と全く違う。アメリカ人にとっての学歴とは、どの大学に入ったか?ではなく、どのレベルの学位(学士、修士、博士)まで取得しているかだ。普段の会話の中でも、
「●●大学に入ったからすごい」
という会話はなく、大学や大学院で何を勉強したか?しているか?に焦点が当てられる。
そしてどこに行っても改善点だらけだ。むしろ、みんなが改善点があることを許容している。だからやるべきをことをきちんとやるだけで評価される。
多くの日本人は本来非常に優秀で努力家だ。それにも関わらず多くの人たちが自信を持てずに悩んでいる。
そんな人は、是非一度アメリカに来て、もう少し人生を気楽に捉える姿勢を学んでくれたらと思う。アメリカ人と話していると、
「そんなんでいいんだ!」
と思えることが多いから。
だから、英語がペラペラに喋れるようになる必要はないが、アメリカ人や他の英語圏の人たちと仲良く楽しく話せるくらいには、みんな英語を話せるようになるべきだと思う。
そうすれば、普段、日本では評価されなかった自分が意外と評価されたり、アメリカ人が自信を持っているレベルの低さを見て自分に自信がつくと思う。
アメリカ人と対等に話したり、コミュニケーションをとっていく上で必要な英語学習に関しては、僕自身が運営しているカナンアカデミーの英語eラーニング講座で学習してもらえるようにしている。
また、日本を脱出する様々なオプションを知っておきたい人には以下の記事がオススメ。